私が共同代表のアーニ出版・ホールでは、常時十数校の学生対象に、校外研究学習とでもいうべきフィールドワーク(以下FW)が開かれています。今回は、私が最近行なった東京大学『法と社会と人権ゼミ』FWの内容と学習効果について報告します。
このFWは1992年以降、川人博弁護士が東大教養学部講師として、上記のタイトルで続けているもので、学生の視野を広げ、意識改革を目指し、社会への還元を目的としたものと思われます。
今回のFWの受講者は男子学生だけだったので、当日のテーマを『性と人権――戦争とレイプ』と決め、事前に宿題として、私の“月替わりメッセージ”(HP)『九州大学、生体解剖実験の真相』の感想文を提出することから始めました。当日は、舞台中央に貼った性教育の樹――私の概念と実践――(右上図)から解説。その中の「マスメディアの影響」の、特にレイプについてのプレートに注目させると同時に、『デートDVを知っていますか』(DV防止ながさき 編)および、『レイプ・男からの発言』(ティモシー・ベイケネ著、筑摩書房)を資料としているとして、この2冊を示しました。
さて、導入は、移動式黒板に貼ったSafe
Strong Freedom の3枚のプレートの前に、男子学生と女子学生に扮した学生を配置し、上記の
安全・強さ・自由に対する各人のイメージを発表するロールプレイから開始。シチュエーションは、恋愛関係にある二人が「どのよううな知識、意識を抱いてSEXをしようとしているのか?」というもの。
Safeに対して男子は“性感染症を防ぐ”を挙げましたが、女子に扮した学生のイメージには“望まない妊娠を防ぐ”が出てこない――これは、まさにジェンダーの差異と言えるでしょう。Strongでは、女子に扮した学生に「女性には排卵日というのがあって、月経周期が28日型の場合は、月経開始の第一日目から数えて14日目前後であり、その前後数日間は妊娠の可能性が高い」などを教え、その上で「No!」と断わるという初歩学習から始めました。ところで、恋人役からSEXを断わられた男子学生が、「だったら、マスターベーションでがまん!」と答えたのは正解!
3つ目の
Freedomでは、「性的自由とは何か」を発表してもらいました。
話は変わりますが、私は1970年、当時東洋大学学長だった故堀秀彦氏を中心とする数人で、北欧の性教育調査研究の旅をしました。その時、スウェーデンの某新聞の編集長にインタビューしたのですが、「人間にとって最も望まれるものは?」という問いに「Freedomだ!」と、迷わず彼は答えました。
「政治からの自由、宗教・道徳・倫理・民族差別からの自由。身近なことで言えば、自分自身への抑圧、無知、男性神話からの自由。そして性的自由だ」と。堀先生は反論します。「性的自由――特にSEXに関しては、相手が存在しなければ成立しない。とすると、私の性的自由は相手にとっても性的自由であり得るのか?男の性的自由は、同時に女にとっても性的自由たり得ると、あなたは思うのか?」。
私はこの例を引いて、ゼミの学生たちに問題提起をしたのです。さて、この続きは次号で――。
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