第27回 私と性教育──なぜ?に答える                                      2006.5  


東大生『法と社会と人権ゼミ』
   ──フィールドワーク報告 その1──

             性を語る会代表  北沢杏子

 


 私が共同代表のアーニ出版・ホールでは、常時十数校の学生対象に、校外研究学習とでもいうべきフィールドワーク(以下FW)が開かれています。今回は、私が最近行なった東京大学『法と社会と人権ゼミ』FWの内容と学習効果について報告します。
 このFWは1992年以降、川人博弁護士が東大教養学部講師として、上記のタイトルで続けているもので、学生の視野を広げ意識改革を目指し社会への還元を目的としたものと思われます。

 今回のFWの受講者は男子学生だけだったので、当日のテーマを『性と人権――戦争とレイプ』と決め、事前に宿題として、私の“月替わりメッセージ”(HP)『九州大学、生体解剖実験の真相』の感想文を提出することから始めました。当日は、舞台中央に貼った性教育の樹――私の概念と実践――(右上図)から解説。その中の「マスメディアの影響」の、特にレイプについてのプレートに注目させると同時に、『デートDVを知っていますか』(DV防止ながさき 編)および、『レイプ・男からの発言』(ティモシー・ベイケネ著、筑摩書房)を資料としているとして、この2冊を示しました。

 さて、導入は、移動式黒板に貼ったSafe  Strong  Freedom の3枚のプレートの前に、男子学生と女子学生に扮した学生を配置し、上記の 安全・強さ・自由に対する各人のイメージを発表するロールプレイから開始。シチュエーションは、恋愛関係にある二人が「どのよううな知識、意識を抱いてSEXをしようとしているのか?」というもの。
 Safeに対して男子は“性感染症を防ぐ”を挙げましたが、女子に扮した学生のイメージには“望まない妊娠を防ぐ”が出てこない――これは、まさにジェンダーの差異と言えるでしょう。Strongでは、女子に扮した学生に「女性には排卵日というのがあって、月経周期が28日型の場合は、月経開始の第一日目から数えて14日目前後であり、その前後数日間は妊娠の可能性が高い」などを教え、その上で「No!」と断わるという初歩学習から始めました。ところで、恋人役からSEXを断わられた男子学生が、「だったら、マスターベーションでがまん!」と答えたのは正解!
 3つ目の Freedomでは、「性的自由とは何か」を発表してもらいました。

 話は変わりますが、私は1970年、当時東洋大学学長だった故堀秀彦氏を中心とする数人で、北欧の性教育調査研究の旅をしました。その時、スウェーデンの某新聞の編集長にインタビューしたのですが、「人間にとって最も望まれるものは?」という問いに「Freedomだ!」と、迷わず彼は答えました。
 「政治からの自由、宗教・道徳・倫理・民族差別からの自由。身近なことで言えば、自分自身への抑圧、無知、男性神話からの自由。そして性的自由だ」と。堀先生は反論します。「性的自由――特にSEXに関しては、相手が存在しなければ成立しない。とすると、私の性的自由は相手にとっても性的自由であり得るのか?男の性的自由は、同時に女にとっても性的自由たり得ると、あなたは思うのか?」。
 私はこの例を引いて、ゼミの学生たちに問題提起をしたのです。さて、この続きは次号で――。 


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