北沢杏子のWeb連載

第38回 私と性教育――なぜ?に答える 2007年4月

 

『きをつけて!きけんな ばしょ』の授業と児童の反応

 先月は幼稚園・年長組の子どもたち50人を対象に、『きをつけよう!がっこうのかえりみち』の紙芝居を私が演じて、もうすぐ小学校1年生になる子どもたちへ(幼稚園のように送迎バスのない)通学路での安心・安全教育の実践を書きました。今回は小学校3〜4年生児童160人を対象に、私が制作したDVDを使っての『きをつけて!きけんなばしょ』の授業の様子を紹介しましょう。
 この映像教材は、子どもたちが遊びながら「危険回避」の学習ができるよう、ペープサートの人形が(声優のセリフにあわせて)演じます。児童は人形の動きを自分の行動と重ね合わせてか、真剣そのもの。大へん効果的でした。

■第1話――公園。男の子が犬の散歩の途中、公園のトイレに行こうとすると、背広姿の男の人が「犬の散歩を日課にしているなんて感心だねぇ。ごほうびに1,000円あげよう。おじさんは、いい子にお小遣いをあげるのが好きなんだよ」と、すり寄ってきました。DVDはここでストップ。「みんなだったら、どうする?」と意見を聞きます。
 「『いらない』と言う!」「断わる!」の回答のほかに、「1,000円札をさっと取って逃げる!」「1万円なら一緒に行ってもいいや」などもあって危険、危険。

■第2話――淋しい神社の境内。田舎のおばあちゃんの家に泊まりにきている女の子が蝉を取りにくると……知らない男の人が、「おじさんの仔犬が迷子になっちゃったんだよ。一緒に探してくれないか?」と、声をかけてきました。こんなとき、みんなだったら、どうする?

■第3話――日曜日――誰もいない工事中の建築現場。若い男の人が「新しいゲームを買ってきたんだ。一緒にやらないか?」と、男の子を誘います。さあ、こんなときはどうする?


 こうして、人通りの少ない駐車場で、知らない女の人から、「いま、あなたのお母さんが交通事故にあって、病院に運ばれたのよ。さ、一緒に救急病院に行きましょう」と誘われたり、右側は長く続く塀、左側は路上駐車がたくさん停まっている人通りのない道を歩いていると、突然声をかけられたり、集合住宅のエレベーターの中で、若い男の人と二人きりになったり、賑やかな繁華街でカメラマン風の男女に「コマーシャルのモデルにならないかい」「かわいい縫ぐるみをあげるわよ」と、男の子と女の子が挟みうちにされて、連れていかれそうになったりと、4話、5話、6話、7話でシチュエーションが変わり、その度にペープサートの人形は、あわや!という設定になっていくのですが……。

 さすが小学校3・4年生ともなると、幼稚園児と違って回答もしっかりしてきます。「おばさんの言ってることが嘘か本当か、家に帰って電話してみます」「誘いに乗らないようにと、学校で習ったばかり」「あなたの免許証を見せてください」「コンビニやガソリンスタンドに逃げ込む」などなど、口々に答えました。
 『子ども110番の家』やコンビニ、ガソリンスタンド、美容院など、常時、人がいるところに駆け込んで助けを求めるのはよい方法です。ふだん、家族と一緒に『子ども110番の家』のポスターの貼ってある店舗や事業所などを確認して、軽く挨拶しておくといいですね。
 また、事件に遭遇した場合、相手の性別や体格、年齢、服装、帽子や眼鏡などの特徴や、車の車種、色なども、とっさに覚えておくことが、事件解決の糸口になることも教えておきたいものです。加えて、相手が自分に危害を加える人かどうかを直感的に察知できるトレーニングも必要でしょう。これらは、自分で自分を守るための最も重要なポイントだからです。


 

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