北沢杏子のWeb連載
第47回 私と性教育――なぜ?に答える 2008年1月 |
アフリカ8ヵ国研修生の 性に関する質問と講座 その1
毎年、冬になるとアフリカからの研修生が私共のアーニ出版ホールにやってきます。今年はベナン、ブルキナファソ、ガーナ、マダガスカル、ナイジェリア、セネガル、タンザニア、ザンビアの8ヵ国からの10人と日本側からのコーディネーター、通訳他の計15人。それに医大付属看護専門学校の学生18人が加わり、ホールは賑やかな雰囲気に包まれた国際的な研修・講座となりました。
講師の私の事前の仕事は、まず世界地図を広げて、それぞれの国がどこにあるのかを調べます。次に、各国の宗教、文化、習慣、HIV/AIDSの感染/発症率、人口妊娠中絶が合法か非合法かなど、資料を読んだり研修生のみなさんからの聴き取りを送付して貰って、ノートにメモしておきます。上記各国の研修生からの聴き取りの共通点を要約すると――
1.性や性交にかかわる話や教育はタブー
・学校でも家庭でも教えない、話すことができない
・10代の退学の増加(HIV/AIDSの知識を学ぶ機会がない)
2. HIVの検査を受けたがらない
・検査で陽性と出ても、パートナーに告げようとしない
・陽性者は周囲の人びとから差別・非難を受ける(売春婦!など)
・貧困/迷信/売買春の増加
3.感染がわかっても治療が受けられない
・治療費が高価すぎるため、薬草などで間に合わせている(HIVの新薬は特許権があまりにも高い)
・誤った迷信(例えば幼い処女と性交すれば治るなど)を信じ、幼児レイプなども頻発している
・陽性でも診療所への通院を途中でやめてしまう(周囲の理解が得られない。病院への交通機関がな いなど)
4.薬物乱用――知識がないため注射器の使いまわしでHIV感染が増加
・若者の就労先がなく、無気力な日常が薬物依存者を増加させる
・性交体験が低年齢化し、家族からの排除される
5.ある地域では――
・親が決めた若年結婚の慣習がある
・一部部族では、一夫多妻制が容認されている
・一部の宗教グループは、コンドームを受け入れない
◆ 性教育およびHIV/AIDS教育に関する研修生たちの質問は――
ブルキナファソ
1. 12歳以下の子どもたちへの性教育・HIV/AIDS教育はの方法は?
2.北沢さんはHIV感染予防のために、どのような活動を行なっているか?
3.「性交」について話すことはタブーとする親たちを、HIV/AIDSについて子どもたちに教えられるようにするには?
4.感染者を受け入れる気持ちを社会に広げるためには?
ガーナ
1.学校中退者の増加、10代の望まない妊娠と中絶への教育と対策は?
2.HIV/AIDSについての迷信や思い込みを払拭するには?
マダガスカル
1.小さい子どもにも、性教育は必要か?
2.子どもたちへ両親が性教育をするための支援は?
ナイジェリア
1.中学校で性について教えるべきか?
2. 10代の中絶を、国は合法化すべきか?
3. 10代の望まない妊娠、STD感染へのカウンセラーの対応は?
4.日本のHIV陽性者の立場は、社会から受け入れられているか?
5. 陽性という検査結果を聞いた本人の精神的問題をどうするか?
セネガル
1.性教育やHIV/AIDS教育のプログラムは?
2.体(性器など)について教える/生理について教える/どのように?
タンザニア
1.検査に行く勇気がない若者たちへ、どうカウンセリングするか?
2.貧困のために売春をし、HIVに感染している。どう解決すべきか?
3.感染者は性交を避けたほうがいいのか?
ザンビア
1. HIV/AIDSの両親から生まれた子どもの中に陰性が生まれることがあるのはなぜか?
2. 6ヵ月間の完全母乳保育はHIV/AIDSの感染予防になるのか?
ベナン
1.男女共修の性教育の良い点・悪い点は?
2.子どもへの性教育はどのような話題から始めるべきか?
3.どんな点に注意して指導したらよいか?
これらのニーズに応えるための「性教育・エイズ教育講座」――来月は、私共アーニ出版が開発した視覚に訴える教材を使いながらの講座の模様をお知らせします。