第5回 |
|
||
2004.7
性を語る会代表 北沢杏子 |
|||
先月は、私が全国の中学校・高校・専門学校の生徒・学生対象のHIV/エイズの公開授業で、「現時点での予防法はNO SEXかコンドームしかない」と、性教育バッシングの渦中にあってもなお、果敢に(!)『コンドームの正しいつけ方10カ条』を教え続けているお話をしました。 今月は、コンドームの授業にまつわるとっておきのエピソードを紹介しましょう。 つい数日前、G県A市の小学校で『からだの抵抗力とエイズ』という授業をしたときのこと。私が黒板に教材を貼って、"免疫”について説明しようとすると、5年生の男子がつかつかと進み出て、体育館に居並ぶ全校生・PTA・教員300名の前で、堂々と説明を始めたのです。 「ぼくたちのからだを病原体から守ってくれるのは、血液の中の白血球です。ここに貼ってある白血球の5人のスタッフを紹介します。くいしん坊のマクロファージ、指令を出すヘルパーT細胞…」 もうひとつの学校でも、5年生男子が黒板にサラサラと書きました。「コンドームの正しい使用が予防になる」。下級生が「コンドームってなーに?」と質問したので、「エイズのウイルスは感染した男の人の精液、または女の人のちつの分泌液に入っているので、それを防ぐために性器にかぶせるゴムのお帽子よ」と、私が答えると、彼は憤然として「そんな幼稚なことを言わないで!」。 性教育バッシングの激しい日本にも、こんな学校もあるんですよ(あとでわかたのですが、文部科学省の"エイズ教育・性教育・指定校”なんだそう。文科省もやるぅ!)。 つぎは、四国K県U村の『おらが村のいのちの教室』での公開授業。中学2年生の生徒が二人、相合傘で登場。女子が「雨が降ったら傘をさす」。すると、すかさず「愛しあったらコンドーム!」と、真っ赤な顔で男子。会場の生徒・教員・PTAはワッハッハと大きな拍手。 続いて私が用意した指人形をつけた二人が登場。デートの場面を演じました。声をそろえて「二人の愛はとまらない、二人の愛はとまらない…」と歌うので「とまらなかったらどうするの?」と私が訊くと、「コンドームをいたしましょう!」で、会場がまたまた爆笑。なかなか楽しい導入部です。 高校生になると、全校生500人を前に(先生に借りたらしい)白衣を着た数人の上級生が登場。午前中の授業で私が教えたとおりに再現します。 隊長「われわれはコンドー隊である。これからコンドームの正しいつけ方10カ条の実習をする。よく聞けよ!」 …とまあ、毎回こんなに明るく楽しくいくことばかりではありません。同じ内容でも学校によっては、私がコンドームの「コ…」と口にしたとたん、教育長が立ち上がって「生徒、退場!」と叫ぶこともあります。 また、講演や公開授業依頼の最初から、「コンドームの10カ条だけはやめて頂きたく…」と書面で拒否してくる学校もあります。なんといっても1992年12月2日、天下のNHK『くらしのジャーナル』で、コンドームのつけ方10カ条の授業を放映した過激派の北沢先生ですからねえ、風当たりもすごく強いんですよ。 しかし(先月も書きましたが)、地球上で新たにエイズウイルスに感染する人、発症する人は年間500万人(累計約6,000万人、うち死亡が2,000万人)。なかでも10代・20代が最も多く、1日に推定6,000人。14秒にひとりが感染または発症しており、日本でも(未報告を含めると)、年間3,000人が感染。うち10代、20代が43%を占めているというのが現状です。 最近では妊婦のHIV感染も激増。30代、40代の発症率も跳ね上がっているとか。「生徒退場!」なんて言っている場合じゃないと思いますけどねえ。 みなさんんはどう思われますか?
|