第7回 |
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2004.9
性を語る会代表 北沢杏子 |
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先月は私が製作した教育教材ビデオ「10代に知らせたい!性感染症とエイズ」を上映したあと、会場から挙手した母親役と私が演じる娘役で、望まない妊娠や性感染症を心配する母親の"声かけ”のロールプレイ(役割演技)を紹介しました。 今回は去る8月6日に行なわれた「第11回エイズフォーラムin横浜」(1994年に横浜で開催された第10回国際エイズ会議に出席した専門職の有志たちが、国際会議の模様を一般市民に伝えようと企画。以来毎年8月、若者のボランティアと共に開催)の分科会で、同じく会場から挙手した父親役と息子役の対話のロールプレイ。 場面設定は、「高校生の息子が友人から風俗店ゆきを誘われているのを知って…」というものです。
ロールプレイT──息子と父親Aの会話 父 おまえ、さっき携帯でどこかアブナイところへ行こうと相談していたようだが…。 息子 えっ、おやじ聞いてたのか? 居眠りしてるとばかり思ってたのによ。(独白)やべえ…。 父 そこが、どういうところか知っているのか? 息子 ピンサロとか、おやじは行ったことねえの? 父 ないねー。 息子 K町とかにあるんだけど、30分で3,000〜4,000円だって。部活の仲間と8人で明日あたりに行こうって誘われてるんだ。 父 お父さんとしては行かないのが望ましいんだけど(笑)。どうしても行きたいのか? 息子 誘われてるから。つきあいは大事だから…。 父 そこで、どういうことをされるのか知ってるのか? 息子 ま、他人に聞いたりして大体のことは知ってるつもりだけど。 父 どういう危険性があるのか知ってるのか? 息子 詳しくは知らないけど、すっごく気持ちいいとか。 父 3,000円や4,000円でやらせるところはな、おまえ。オーラルセックスっていって、口にくわえるんだぞ、あれを。 息子(独白)やっぱ、行ったことあるんじゃねえのか。 父 そうすると女の人ののどにクラミジアなんかがあって、おまえの尿道口から感染する。HIVにも感染するんだぞ。 息子 わかりました。じゃあ、どうすれば防げるんですか? 父 コンドームをつけなさい!(笑) 息子 もし、店に置いてなかったら、自分で用意するとか。 父 そうだ。でも、相手が「こんなのいらないわよ」って、剥ぎ取っちゃうかもしれない。そんなときは…、 息子 また、着ける(笑)。 父 「自分の健康は自分で守る」しかないんだぞ。 息子 わかりました。じゃあ、気をつけて行ってきます(爆笑)。 父 このまえ、「エイズフォーラム』っていうのがあってね、そこで北沢杏子さんっていう性教育の専門家の話を聞いたんだよ(笑)。その人は国連人口基金とかJICAとかから途上国に派遣されててね、HIV/エイズの予防などを教えるんだって。その人の話によると(笑)、ピンサロなんかに行くと、そこに勤めている女の人の口の中に淋菌とかクラミジアなんかの病原菌があって、うつされる可能性があるんだそうだ。 息子(あっけにとられて)はあ、そうなんですか(笑)。 父 だからね、君がそこへ行って非常に気持ちいいと思うかもしれないけど(笑)、あっという間に病気をうつされてしまう可能性があるんだってさ。お父さん、おまえの健康が心配だからね、行かないほうがいいと思うんだけど、どうかな? 息子 うん(笑)。 父 つきあいが大事か、自分の健康が大事か…? 息子 何かいい断り方があったら教えてください(笑)。 父 そういう可能性があるっていうことを、みんな知らないと思うんだよね。性感染症はセックス──性交渉だけだと思っているかもしれないけど──いまや、下半身だけじゃなくて上半身にまで広がっているんだって…そう話してみたらどうかな? 息子 じゃ明日、友だちに話して、やめようって言ってみるよ。
父親AさんとBさん、どちらが説得力があったと思いますか。高校生の息子と父親の会話なんて「ほとんどあり得ない」と否定しないで落ち着いて(!)読んでみてください。 前文で紹介したビデオ「10代に知らせたい!性感染症とエイズ」の中に登場する、(社)地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター所長、岩室紳也先生(泌尿器科医)は、「父親が日常生活の中で"尿路関係の病気だったら泌尿器科へ行けば?”とさり気なく言っておくことが必要」と述べています。それが父性愛かも。
次回は私による障害をもつ子どもへの性教育「ひとりひとり大切ないのち」の勉強会の様子を紹介しましょう。 |