第9回 
  私と性教育─なぜ?に答える

 



「愛しあったらコンドーム」の寸劇をするWなかま”たち

 

2004.11

 

性を語る会代表  北沢杏子

 
       
 

  先月は去る8月に開かれた「第11回エイズフォーラムin横浜」の分科会で、会場から挙手して出ていただいた父親役と息子役に、「高校生の息子が友人から風俗店ゆきを誘われて…」という設定で行なったロールプレイを紹介しました。

  今回はダウン症という障害をもつ子どもたちとの、楽しくも心あたたまる勉強会の様子をお伝えしましょう。

  私が性教育を始めてから40年。さまざまな障害をもつ子どもや若者、おとなたちと「性と愛の勉強会」を始めてから35年になります。

  この間の大きな変化は、障害をもつ子どもたちの親同士のネットワーク、大きな入所施設からグループホームへの移行、そして地域での支援活動の拡大など、遅ればせながら福祉社会への歩みがしっかり地についてきたということでしょう。

  最近私は、日本ダウン症協会G県支部の親子キャンプで行なった勉強会の模様を撮影、教育教材ビデオ『ひとりひとり大切ないのち』を製作しましたが、小学部から高等部の子どもたちとその保護者17人の名前をスーパーで「すべて出して!」との申し出があり、意識の積極的な変りようを嬉しく思いました。

  障害をもつ子どもたち、若者たちが堂々と社会に出て、地域で豊かに生きていく保障を行政に求めていくことこそが、ノーマライゼーション実現への何よりの近道だと思うからです。

  勉強会は子どもたちの「わたしはどうして生まれたの?」という質問から始まります。布で作ったお母さんねずみとお父さんねずみを2人の子どもが持って、みんなの前に出ます。「あかちゃんねずみはどうやって生まれるのかな?」「ねずみだからチューしたら生まれるのかな」「ちがうよ、お母さんもお父さんも、あかちゃんのもとを持っていてね、仲よくしたり、おんぶってすると、もとともとが合体して生まれてくるんだよ」「ほーらね、あかちゃんねずみが生まれたよ」。座席の子どもたちが、棒の先につけた布製のねずみのあかちゃんを高く揚げます。「何匹うまれたかな?あれっ、10匹も生まれたよ」「お母さんねずみさん、感想は?」「かわいい!」「お父さんねずみさん、感想は?」「うれしい!」「そう、みんなもこうやって、かわいい、嬉しいって生まれてきたんだよ」。   

  つぎは、小学部1年生、中学部1年生、そしておとなの男女へと成長していく様子を描いた教材に、全員が、手に手に持ったマグネット式のパーツを貼っていきます。お父さんには、ヒゲ、ノドボトケ、わき毛、ちん毛(正しくは性毛)、お母さんには、おっぱい(正しくは乳房)、わき毛、まん毛(正しくは性毛)。ちんちんは「せいき」、おまんちょも「せいき」と、みんなで大きな声で言ってみます。

  なかには、「エッチ、大好き!」と叫ぶ男の子もいますが、何を言っても叱られないこの勉強会がみんな大好きです。

  高等部になると、異性を好きになります。次回は、「愛しあうこと、その支援」についての勉強会の様子を紹介しましょう。 


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