北沢杏子のWeb連載

90回 私と性教育――なぜ?に答える 2011年8月

 

愛はなぜ終るのか ―3つの解決法―

 想像してみてください。いまから400万年ほど前、私たち人類の祖であるアウストラロピテクスのカップルがアフリカの川辺に寝そべって、空を見上げている様子を。2匹が、いや2人が軽くたたきあったり撫であったり、お互いに、体中を覆っている毛の間のゴミや葉っぱを取り除いたりという愛の「毛づくろい」を繰り返して様子を。ところで、この愛は2匹が、いや2人が生きている間中続くものでしょうか?

 『愛はなぜ終るのか?』の著者で人類学者のヘレン・フィッシャーは、アウストラロピテクス以降400万年にわたって引き継がれてきたDNAに照らして、「愛は4年で終る」と同書の中で断言しています。
 つまり、「恋愛当初の“燃えるような愛”は、世界先進国の平均離婚年数が“結婚後4年目”と示すように、4年しか続かない」――これを科学的に説明すると、大脳皮質にロマンティックな陶酔状態をもたらすPEA(アンフェタミン様物質)は、シナプスを伝わって神経細胞から神経細胞へとめぐり、脳の特定の受容体と結合して“恋の感情”をもたらすのですが、その受容体は、こうした激しい物質(PEA)の襲撃に、4年以上は耐えられないという論理です。
 そう言われると、わかるような気もしますよね?

 ある日、私の仕事場の拠点であるアーニホールに、地域で活動している40歳代の数人の女性が、「これから先、自分たちが生きていくために学びたいことなど、情報収集をしたい」と、質問を携えてやってきました。

Q 私が夫に関心を無くしていて、日々どう家庭をやりくりしていくか悩んでいる。
Q 子どもは日々、どんどん成長しているのに、夫は逆で不満。
Q 私は性=生であると考えているのに、夫は性はセックスとだけと認識。今後、この誤差を縮めていくには?
Q 夫は普通の父親、普通の夫で人生を送りたくない、むなしい、と訴えている。これに対し、経済的に自立していない私は、つい、発言・行動に遠慮がちで、逆にこっちの方がむなしい。むなしい同士の結婚生活を、どう改善すべきか?などなど……。

 愛しあって結婚したはずなのに、いまは夫を愛せない。職場から帰ってきても目も合わせないし会話もない。夕食は私は子どもと済ませ、夫は遅い帰宅後一人で食べている。別れたくても子どもがいるし、夫なしでは経済的にも自立できない。
 夫が出張で帰ってこないとわかると、娘は「ママ、よかったね」と私の顔色を読む。息子に至っては「無害な下宿人だと思えば?」という始末。こんな影響を子どもたちに与えては、教育上よくないと反省しているが……今後、夫との関係性をどう解決すべきか?と言うのです。

 私は3つの解決法を提案しました。
@結婚当初の激しい愛をもたらすPEAは4年しかもたないことを知り、過大な期待をしないこと。むしろ、持続可能なエンドルフィン物質に変える知恵を働かせて、隣人愛的愛情を保つように心がけては?
Aあと10年もすれば来る閉経期。閉経によって女性ホルモン分泌は激減。代替ホルモンとしての男性ホルモン分泌が活発になり、力強い女の“第二の人生”が始まる!
 一方、夫のほうは加齢と共に男性ホルモン分泌が減少。代替ホルモンとしての女性ホルモン分泌が始まり、料理など、家事に打ち込むようになるはず……そうした近未来の家庭生活に期待しよう。
Bあなたが第3号被保険者(専業主婦)であった場合は、離婚後に夫の年金を分割できる制度がある。夫の定年を待って離婚し、年金の分割と財産分与(退職金を含む)で経済的に自立。ボランティア活動など、生き甲斐ある人生を生きましょう。
 いずれにしても「選ぶのはあなた自身です」と。

 さて、読者のみなさん、他によい知恵があったら教えてください。

 「私と性教育なぜ?一覧」へもどる    

トップページ「北沢杏子と性を語る会」へもどる