北沢杏子のWeb連載

91回 私と性教育――なぜ?に答える 2011年9月

 

正しく知ろう!無防備な性行動とHIV感染 そのT

■HIV感染のハイリスク第2位はMSM
 これはドイツの同性間性虐待防止のキャンペーンポスターです。

 年長の男子が年少男子に性行為(マスターベーション、オーラルセックス、アナルセックス他)を迫った場合、どうすべきか?「ストップとはストップということだ。男子はそれぞれの方法でストップ!と言うべし」とあります。自分の体は自分のもの。自分の健康は自分でしか守れない。自分の体を大切にすると同時に、相手の体も大切にと考えれば、相手の意思に反して性虐待・性支配をする男性は、相手の人権を蹂躙したとして「強制わいせつ罪」に問われるとの忠告も書かれています。
 UN AIDS(JOINT UNITED NATIONS ROGRAMME ON HIV/AIDS)の最新情報によると、世界のHIV感染者数は約3,340万人、エイズ関連死亡者数は約200万人となっています。ちなみに日本のHIV患者感染者報告数の累計は18,766人。これに血液凝固因子製剤による感染者(薬害エイズ)を加えると20,205人です(2011年3月27日現在)。
 ところで、UN AIDSの世界規模の調査で判明した最新情報の中で特筆すべきは、HIV感染経路の多様性です。HIV感染のハイリスク群の第1位はIDM(注射器による薬物使用者)、第2位はMSM(男性と性行為を行なう男性)、セックスワーカー(売春男性も含む)、受刑者、移住労働者の順になっています。特に近年、高所得国男性の低所得国少年へのMSM(買春)が拡大していることが報告されています。

 上のグラフは、わが国のHIV感染経路を示したものですが、1999年以降、MSMによる感染が激増していることが示されていますね。これは1998年9月に、それまでの「エイズ予防法」が改正されて、通称「感染症新法※」となったこと。つまり、エイズを特別扱いせず、1種から4種までの感染症のうちの4種感染症として、インフルエンザ、マラリア、クラミジアなどと並ぶ感染症に指定したことから、調査が、より詳細になった結果と思われます。

■アメリカで進む「同姓婚」の合法化
 「世界人口の10%は同性愛者であり、異性愛者は63%、両性愛者(バイセクシャル)は27%」という授業を私が取材したのは、サンフランシスコ市の中学・高校の特別教室でした。思春期にさしかかった10代の男子や女子が、「自分は同性愛者では?」と悩むのを解決するために、ゲイ(男性)およびレズビアン(女性)の教員を各校に派遣し、そうした性的指向を持つ生徒たちを集めて情報提供をしていました。「MSMの場合もコンドームを使用せよ」とも。
 2010年3月、米首都ワシントンで「同姓婚」を合法化する法律が発効し、裁判所の前には結婚許可を申請するカップルの長い列ができたと報道されました。米国では、すでにコネティカット、アイオワ、マサチューセッツ、ニューハンプシャー、バーモントの5州で同姓婚が合法化されており、首都は6ヵ所目となりました。
 オバマ大統領は、カミングアウトした同性愛者の入隊も合法と認めましたが、一方、ホモフォビア(同性愛嫌悪者)と呼ばれる反対派は、これらの合法化の是非について法廷で争う構えをみせているとのことですが……。

※正しくは「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」

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