北沢杏子のWeb連載
第35回 私と性教育――なぜ?に答える 2007年1月 |
親・子で対話をしていますか?―高校生の恋愛意識と性行動―
ある都立高校PTA主催の講演『青春をどう生きるか?――高校生の恋愛意識と性行動――』の講師として出かけました。事前に送られてきた私からのアンケートの回答(親16名、生徒13名)は、次のようなものでした。
Q1-親 結婚生活は楽しいですか? 楽しい8名/楽しくない2名/どちらともいえない5名/楽しくないからやめた1名。
Q1-生徒 高校生活は楽しいですか? 楽しい6名/楽しくない2名/どちらともいえない5名。
Q2-親 STD(性感染症)の予防法を知っていますか?
知っている12名/知らない4名。
Q2-生徒 STD(性感染症)の予防法は?
学校の保健で習った6名/知らない7名。
Q3-親 HIV/AIDSの検査――保健所で匿名・無料で受けられるが。 知っている15名/知らなかった1名。
Q3-生徒 HIV/AIDSの検査――保健所で匿名・無料で受けられるが。 知っている7名/知らなかった6名。
Q4-親 20歳未満の人口妊娠中絶を防ぐには?
学校での性教育が必要2名/正しい避妊教育8名/わからない2名/男性はコンドームを、女性は拒否する勇気を1名/お互いを尊重しあう教育を2名/愛ある関係を1名。
Q4-生徒 20歳未満の人口妊娠中絶を防ぐには?
コンドーム着用8名/ピル1名/避妊の知識を学ぶ3名/セックスをしない1名。
このあと、相手の人権としての「性」を尊重するとは、どういう意味だと思いますか? 性について、人間関係についての悩みがあったら書いてください と続くのだが、親の質問は――男女互いのからだの仕組み・機能について、きちんと知ってほしい/エイズのこと、喫煙のこと、薬物とセックスの関係について/女の更年期、男の更年期について聞きたい。
生徒の質問は――月経不順2名/生理痛3名/マスターベーションは体への害はないのか1名/仮性包茎のなおし方を教えて3名/避妊について、性感染症についてくわしく知りたい4名――となっている。
一方、PTAが同時にとったアンケートの回答(親20名)は――
Q1 高校生の息子・娘のとの関係は?
よい13名/ふつう4名/悪い3名。
Q2 高校生の子どもとの会話はあるか?
かなり13名/ふつう2名/ほとんどない5名。
Q3 高校生の子どもと喧嘩をするか?
いつも9名/たまに7名/ほとんどしない11名。
Q4 子どもの男女交際をどう思うか?
心配13名/気にしていない2名/心配していない5名
Q5 子どもの交際が性的関係になっていないかを考えたことがあるか? いつも考えている7名/たまに考える7名/考えたことはない(うちの子に限って!)5名
Q6 二人の関係がどこまでか訊くことがあるか?
いつも2名/少し2名/まったくない16名
反抗期の高校生、特に男女交際や性についての会話は難しいでしょう。しかし、この回答から、親子間の会話、相談ごと、信頼関係が希薄な日常生活が浮かび上がってきます。
統計によると、中学生の10%、高校生の40%が性体験ありと答えており、16歳女子の17.2%がクラミジア感染しているそうです。人工妊娠中絶に至っては20歳以下の中絶が、総数約29万件の10%以上の30,200件も占めているというのに、高校生の親たちは「うちの子に限って!」と、現実を拒否したり、介入すると面倒だとばかりに身を引いているように見えます。
どうか下の中絶のグラフやクラミジア感染のグラフを見据えてほしい。若い10代の男女交際をモラルとして意見するのではなく、データをもとに話しあえば、お互いに気まずい思いをしなくてすむでしょう。初交年齢が低ければ低いほど、短期間に性的パートナーの数が増え、相手が5人を越えるとクラミジア感染率はぐんと高率になるのです。「初交体験はゆっくり」「相手をみる眼が確かになるまで待つ」ように話す勇気を持ちましょう。
人工妊娠中絶についても、必要ならば教える勇気を持ちましょう。アンケートの回答にもあるように、生徒たちは「避妊および性感染症予防法について詳しく教えて」といっているんですよ!