このシリーズの特徴は、教材として大型紙芝居を使ったことです。指導する私も、本職の紙芝居屋さんのビデオを観て語り口の練習をしました。パネルを紙芝居の箱の中に入れて引いたり戻したりしながら解説すると、子どもたちはこの小さな劇場にみるみる引きつけられてくることがわかります。教材に紙芝居を入れる――これは大きな発見でした。
第1巻「よくわかる育ちゆくからだとこころ」は、3年生と4年生を対象に、受精のしくみ、胎児の成長、いのちの誕生の紙芝居を見せながら説明。続いて、二次性徴発現期のからだの変化、変声、乳腺の発達、排卵、月経、精子の産生、射精を説明。
二次性徴を促すのは脳の下垂体からの性腺刺激ホルモン。女子は卵巣に、男子は精巣に働きかけ、女性ホルモン、男性ホルモンが分泌されて二次性徴が現われ始め、月経、射精が起こること。それは将来、次世代へと命を繋いでいくためであること。また、それぞれがからだの中に「成長の目覚まし時計」を持っていて、発現の時期が早い子も遅い子もいる……と結びました。他の子と比べて、自分のからだが最も気になる時期だからです。
第2巻「よくわかる免疫とエイズ」は、免疫のしくみ、白血球の5人のスタッフの活躍、エイズウィルスHIVの特徴について解説。HIVがたくさん含まれているのは、血液、精液、腟の分泌液、母乳の4つであることも説明しました。最後にみんなで、白血球の5人のスタッフとHIVの人形劇を披露。学びと遊びが同時進行の実践を行ないました。
残念なのは、指導要領のHIV/AIDSの感染経路に「エイズは性感染症」であることが明記されていないため、それをカットしたことです。解説書をよく読み、適切な指導をお願いしたいと思います。現に、厚生労働省のエイズ動向委員会発表のHIV感染者のほとんどは、「性交」による感染なのですから。
第3巻「よくわかるタバコの害」は、5年生が対象。大型紙芝居を使って、タバコの煙に含まれる三大有害物質――ニコチン、タール、一酸化炭素の害について解説。とくに、タバコを吸う家庭の子どもたちが、いやおうなく吸わされる副流煙の害についても力説しました。
副流煙による歯周炎や、低体重児の誕生、また、長期の喫煙が引き起こす各種のタバコ病についても、黒板に貼った大判の教材を読みあげると、「こんなにいろいろ病気になるなんて!」「やばいな、おっかねぇ!」と、驚きの声があがりました。
最後に、タバコの誘惑に対して、「いやだ!」と一斉に叫ぶ元気な児童らの声で終了。WHOの勧告にもあるように、禁煙教育は喫煙前の4、5、6年生に行なうべきで、中学生になってからでは遅い!また最近、中・高校生の間で社会問題になっている大麻は、タバコが入り口。したがって喫煙経験のない児童への禁煙教育は緊急課題です。